目次
1. 犬の耳掃除はしないほうがいい?必要かどうか解説
「犬の耳掃除は定期的にしたほうがいい」と聞く一方で、「健康ならほとんど必要ない」という話を耳にしたことがある飼い主もいるでしょう。
実際には、どちらか一方が正しいわけではありません。耳掃除が必要かどうかは、犬の耳の状態や犬種、体質などによって異なります。耳が健康で汚れも少ない場合は、無理に掃除をしないほうがよいケースもあります。一方で、耳の中が蒸れやすい犬や耳の病気になりやすい犬では、定期的なチェックとケアが欠かせません。
ここでは、耳掃除をしなくても問題ないケースと、日頃から耳のケアを意識したほうがよい犬の特徴について紹介します。
1-1. 健康な犬なら耳掃除が不要なケースもある
「犬の耳は定期的に掃除するもの」と思われがちですが、すべての犬に当てはまるわけではありません。
犬の耳には、耳垢や皮脂などを少しずつ外へ押し出す働きがあります。そのため、炎症や異常がなく耳の環境が正常に保たれていれば、耳の中を頻繁に掃除しなくても清潔な状態を維持できることが多いのです。
反対に、必要以上に耳掃除を繰り返すと耳の皮膚に刺激を与えたり、皮膚を保護している皮脂まで取り除いてしまうことがあります。その結果耳のコンディションが崩れ、外耳炎などのトラブルにつながる場合もあります。
耳掃除を行うかどうかは、「耳垢が少しある」という理由だけで決めるのではなく、耳全体の様子を確認することが大切です。例えば、次のような状態であれば積極的に耳掃除を行う必要はないでしょう。
- 耳の中が淡いピンク色で赤みがない
- 耳垢が少なく、自然に乾いている
- 強い臭いがしない
- 耳を気にしたり、掻いたりしていない
- 頭を頻繁に振る様子がない
耳の入り口に少し汚れが付いている程度であれば、湿らせたコットンや犬用のイヤーシートで軽く拭き取るだけでも十分です。綿棒を耳の奥まで差し込むと、耳垢を奥へ押し込んでしまったり、耳道を傷つけたりする恐れがあるため、自宅での使用は避けましょう。
耳掃除は「決まった間隔で行うもの」と考えるよりも、毎日のコミュニケーションの中で耳の状態を確認し、必要なタイミングだけケアするという意識を持つことが重要です。
1-2. 耳掃除が必要になりやすい犬の特徴
一方で、耳の構造や体質によっては耳垢や湿気がたまりやすく、耳掃除が必要になる犬もいます。特に耳の中が蒸れやすい環境では、細菌やマラセチア(酵母菌)などが増殖しやすくなり、外耳炎を発症するリスクが高まります。そのため、耳の状態をこまめに確認し、必要に応じてケアを行うことが大切です。
耳掃除が必要になりやすい犬には、次のような特徴があります。
特徴 | 耳掃除が必要になりやすい理由 |
垂れ耳の犬 | 耳の中が蒸れやすく、通気性が悪いため |
耳の中に毛が多い犬 | 毛が湿気や耳垢をため込みやすいため |
水遊びやシャンプーをする機会が多い犬 | 耳の中に水分が残り、細菌や真菌が繁殖しやすいため |
アレルギー体質の犬 | 耳の皮膚にも炎症が起こりやすく、耳垢が増えることがあるため |
過去に外耳炎を繰り返したことがある犬 | 再発しやすく、定期的な耳のチェックやケアが重要になるため |
例えば、耳が垂れている犬は耳の入り口が覆われるため空気が循環しにくく、湿度が高い状態になりやすい傾向があります。また、耳の中に毛が密集している犬では毛に耳垢が絡み、自然に排出されにくくなることもあります。
ただし、立ち耳の犬であれば耳の病気にならないというわけではありません。生活環境や体質、アレルギーの有無などによって耳の状態は変わるため、犬種だけを基準に判断せず、それぞれの犬の耳の様子を日頃から確認することが大切です。
2.犬の耳掃除の目安や頻度
犬の耳掃除は、やればやるほど良いというものではありません。頻繁に行いすぎると耳の中を刺激してしまう一方で、必要なケアを怠ると耳垢の蓄積や外耳炎などのトラブルにつながる可能性があります。
そのため、耳掃除は適切な頻度で行うことが大切です。ただし、必要な頻度は犬種や耳の形、耳垢の出やすさなどによって異なります。ここでは、犬の耳掃除の一般的な目安や、日頃から行いたい耳のチェック方法について解説します。
2-1. 犬の耳掃除は月1〜2回が目安
犬の耳掃除は、一般的に月に1〜2回程度が目安とされています。ただし、この頻度はあくまで健康な犬の場合であり、すべての犬に当てはまるわけではありません。
耳垢がほとんど出ない犬であれば、数か月に1回程度の軽いケアで十分なこともあります。一方、耳垢がたまりやすい犬や外耳炎になりやすい犬では、獣医師の指導のもとで週に1回程度のケアが必要になるケースもあります。
重要なのは、「決まった日に耳掃除をする」のではなく、耳の状態に合わせて必要なときだけ行うことです。
また、耳掃除のやりすぎは以下のようなトラブルにつながる可能性があります。
- 耳の皮膚を傷つける
- 必要な皮脂まで取り除き、乾燥しやすくなる
- 耳の中を刺激して炎症を起こす
- 耳垢を奥へ押し込んでしまう
特に綿棒を耳の奥まで入れるのは避けましょう。犬の耳道はL字型になっているため、耳垢を押し込んだり、鼓膜付近を傷つけたりする恐れがあります。
耳掃除は「たくさんきれいにすること」が目的ではなく、耳の健康を維持するためのケアです。耳の状態を見ながら、必要最小限に行うことを心掛けましょう。
2-2. 耳の汚れチェックはこまめに行おう
耳掃除の頻度よりも大切なのが、日頃から耳の状態をチェックする習慣です。
耳の病気は初期段階では目立った症状が少ないことも多く、気付かないまま外耳炎などが進行してしまうケースもあります。特に耳が垂れている犬や耳垢が出やすい犬は、週に1回程度を目安に耳の様子を確認すると安心です。
チェックする際は、耳の入り口を軽くめくる程度で十分です。耳の奥まで覗き込んだり、無理に触ったりする必要はありません。次のようなポイントを確認してみましょう。
チェック項目 | 正常な状態 | 注意したい状態 |
耳の色 | 薄いピンク色 | 赤く腫れている、黒ずんでいる |
耳垢 | 少量で乾いている | 大量に付着している、黒色・黄色・ベタベタしている |
におい | ほとんど無臭 | 酸っぱい臭い、腐ったような臭い |
犬の様子 | 気にしていない | 頭を振る、耳を掻く、触られるのを嫌がる |
また、普段のスキンシップの中で耳を触ることに慣れさせておくと、耳掃除や動物病院での診察もスムーズになります。
もし耳垢が急に増えたり強い臭いがする、犬が耳を頻繁に掻いているといった場合は自宅で何度も耳掃除をするのではなく、早めに動物病院を受診しましょう。
2-3. 犬種別にみる耳掃除の頻度
犬の耳掃除は犬種によって必要な頻度が異なります。耳の形や耳の中の毛量、皮脂の分泌量などが異なるためです。
以下はあくまで目安ですが、犬種ごとの傾向を参考にすると適切なケアを行いやすくなります。
犬種・タイプ | 耳掃除の目安 | ポイント |
垂れ耳の犬(コッカー・レトリバー・ビーグルなど) | 月2回程度(耳垢が多い場合は週1回程度) | 通気性が悪く蒸れやすいため、耳垢や臭いをこまめに確認する |
耳の中の毛が多い犬(プードル・シュナウザーなど) | 月1〜2回程度 | 毛に耳垢が絡まりやすいため、耳の中の状態を定期的に確認する |
立ち耳の犬(柴犬・シベリアンハスキーなど) | 数か月に1回程度、または必要時のみ | 通気性が良く耳垢がたまりにくい犬が多いため、必要以上に掃除しない |
水遊びが好きな犬 | 必要に応じて | 水遊び後は耳の入り口を乾いたコットンなどで優しく拭き、水分が残らないようにする |
外耳炎を繰り返す犬 | 獣医師の指示に従う | 自己判断で頻度を決めず、定期的な診察とあわせてケアを行う |
ただし、同じ犬種でも耳垢の量や皮膚の状態には個体差があります。例えば、同じトイ・プードルでもほとんど耳垢が出ない犬もいれば、アレルギー体質で定期的な耳掃除が必要な犬もいます。
そのため、「犬種だからこの頻度」と決めつけるのではなく、愛犬の耳の状態を観察しながらケアの頻度を調整することが最も大切です。判断に迷う場合は健康診断やワクチン接種の際に獣医師へ相談し、愛犬に合った耳掃除の頻度を確認すると安心です。
3.犬の耳掃除に向けて準備する道具
犬の耳掃除を安全に行うには、事前に必要な道具を揃えておくことが大切です。適切な道具を使用することで耳への負担を抑えられるだけでなく、飼い主もスムーズにお手入れを進められます。
また、耳掃除に苦手意識を持つ犬も少なくありません。愛犬ができるだけリラックスした状態で耳掃除を受けられるよう、ご褒美のおやつなども準備しておくとよいでしょう。ここでは、犬の耳掃除を始める前に用意しておきたい基本的な道具をご紹介します。
3-1. 犬用のイヤークリーナー(洗浄液)
犬の耳掃除を行う際は、犬専用のイヤークリーナー(洗浄液)を使用しましょう。耳の中の汚れや余分な耳垢を浮かせて落としやすくするため、自宅での耳掃除には欠かせないアイテムです。
犬用イヤークリーナーにはさまざまな種類があり、愛犬の耳の状態に合わせて選ぶことが大切です。
▼犬用イヤークリーナーの例▼
種類 | 特徴 | おすすめの犬 |
一般的な洗浄タイプ | 耳垢や汚れを浮かせて落とす | 健康な犬の日常ケア |
保湿成分配合タイプ | 洗浄しながら乾燥を防ぐ | 皮膚がデリケートな犬 |
低刺激タイプ | アルコールや刺激成分を抑えている | 子犬や敏感肌の犬 |
初めて使用する場合は、低刺激タイプを選ぶと安心です。
なお、人間用の耳洗浄液や消毒用アルコール、オキシドールなどを使用するのは避けましょう。犬の耳は非常にデリケートなため、刺激によって炎症や痛みを引き起こす恐れがあります。
また、耳垢が大量に出ている場合や耳から強い臭いがする場合は、病気が原因になっている可能性もあります。その場合はクリーナーで無理に掃除をするのではなく、まず動物病院で診察を受けることが大切です。
3-2. 耳を拭くコットンやガーゼ
耳掃除には、コットンやガーゼを準備しておきましょう。イヤークリーナーで浮かせた耳垢や汚れを優しく拭き取るために使用します。柔らかい素材のため耳への刺激が少なく、初めて耳掃除をする飼い主でも扱いやすいのが特徴です。
特におすすめなのは、指に巻き付けられる大きさのコットンやガーゼです。指先の感覚で力加減を調整できるため耳を傷つけにくく、安全にお手入れできます。
一方で、綿棒を耳の奥まで入れることは避けましょう。犬の耳道はL字型になっているため、綿棒を奥まで入れると耳垢をさらに奥へ押し込んでしまったり、耳道を傷つけたりする可能性があります。
耳掃除では、見える範囲だけを優しく拭くのが基本です。奥の耳垢まで無理に取り除こうとせず、届かない汚れはイヤークリーナーで自然に排出されるのを待ちましょう。
また、コットンやガーゼは一度使ったら新しいものに交換し、汚れた面で何度も拭かないようにすると衛生的です。
3-3. ご褒美のおやつ
耳掃除をスムーズに行うには、ご褒美のおやつも準備しておくことをおすすめします。
耳を触られることが苦手な犬は少なくありません。無理やり耳掃除をすると、「耳を触られる=嫌なこと」と覚えてしまい、次回以降ますます嫌がるようになることがあります。
そこで、おやつを使って耳掃除をポジティブな体験にすることが大切です。例えば、次のような流れがおすすめです。
- 耳に軽く触れる
- 落ち着いていられたらおやつを与える
- 耳をめくる
- できたら再びおやつを与える
- 耳掃除が終わったらたくさん褒める
このように少しずつ成功体験を積み重ねることで、「耳掃除をすると良いことがある」と覚えやすくなります。特に子犬の頃からこの習慣を続けておくと、成犬になってからも耳掃除を嫌がりにくくなります。
なお、耳掃除中におやつを食べるのが難しい犬は、終わった後に与えるだけでも十分効果があります。
3-4. 汚れてもいいタオル
耳掃除をするときは、汚れてもいいタオルを1〜2枚用意しておくと安心です。
イヤークリーナーを入れた後、犬は耳の違和感をなくそうとして勢いよく頭をブルブル振ります。このとき、耳垢や洗浄液が周囲に飛び散ることがあるため、ソファやカーペットの上ではなく、掃除しやすい場所で行うのがおすすめです。
タオルは次のような場面で活躍します。
- 愛犬の体の下に敷いて床の汚れを防ぐ
- 飛び散った洗浄液を拭き取る
- 耳の周りを優しく拭く
- 飼い主の膝の上に敷いて犬を安定させる
また、小型犬であればタオルで体を軽く包むようにすると、急な動きを抑えやすくなり、耳掃除がしやすくなる場合もあります。ただし、強く押さえつけると犬が怖がってしまうため、あくまで安心できる程度に包むようにしましょう。
耳掃除は道具を揃えるだけでなく、愛犬が落ち着いて過ごせる環境づくりも重要です。静かな部屋でリラックスしたタイミングを選び、短時間で終わらせることを意識すると、犬にも飼い主にも負担の少ない耳掃除ができます。
4. 【ステップ別】自宅でできる犬の耳掃除のやり方
犬の耳掃除は、正しい手順で行えば自宅でも無理なくお手入れできます。ただし、耳の中は非常にデリケートなため力を入れてこすったり、無理に耳の奥まで掃除したりすると、かえって耳を傷つけてしまう可能性があります。
また、耳掃除が苦手な犬への無理強いはNGです。耳に触られること自体を嫌がるようになってしまうこともあるため、愛犬の様子を見ながら少しずつ進めることが大切です。ここでは、自宅で安全に行うための犬の耳掃除の手順をステップごとに解説します。
4-1. 犬をリラックスさせ、耳に触れても問題ないか確認する
耳掃除は、犬が落ち着いているタイミングで始めることが大切です。散歩や遊びの直後で興奮しているときや、眠っているところを無理に起こして行うと、耳掃除に苦手意識を持ってしまうことがあります。
おすすめは、食後やブラッシング後など愛犬がリラックスしている時間帯です。静かな部屋で優しく声をかけながら、普段どおりにスキンシップを始めましょう。
いきなり耳掃除をするのではなく、まずは耳に触れても嫌がらないかを確認します。例えば、次のような順番で少しずつ慣らしていくと安心です。
- 首や肩を優しく撫でる
- 頭を撫でる
- 耳の付け根を軽く触る
- 耳をめくって数秒キープする
この段階で嫌がらずにいられたら、おやつを与えてたくさん褒めてあげましょう。
もし耳を触っただけで逃げたり怒ったりする場合は、その日は耳掃除を無理に進めないことが大切です。数日に分けて耳を触る練習から始めることで、耳掃除への抵抗感を少しずつ減らせます。
4-2. 耳の状態をチェックする
耳掃除を始める前に、まずは耳の状態を確認しましょう。耳の異常がある状態で無理に耳掃除をすると、痛みを悪化させたり炎症を広げる可能性があります。
耳を軽くめくり、次のような点をチェックします。
- 耳の中は薄いピンク色をしているか
- 赤みや腫れがないか
- 耳垢が大量についていないか
- 黄色や黒色の耳垢が出ていないか
- 強い臭いがしないか
- 膿や出血がないか
健康な耳であれば、耳垢は少量で耳の中はきれいなピンク色をしています。
一方で、耳垢が大量に付着している場合や、悪臭・出血・強い赤みがある場合は、外耳炎や耳ダニなどの病気が隠れている可能性があります。このような状態では自宅で耳掃除を続けるのではなく、動物病院で診察を受けましょう。
また、耳を触っただけで強く痛がる場合も、無理に掃除を行わないことが大切です。
4-3. コットンやガーゼにクリーナーを含ませる
耳の状態に問題がなければ、犬用イヤークリーナーをコットンやガーゼに適量含ませます。
初心者の場合は、イヤークリーナーを直接耳に流し込むよりも、コットンやガーゼに含ませて拭き取る方法のほうが安全で取り組みやすいでしょう。
コットンは液が垂れない程度に湿らせるのがポイントです。クリーナーをたくさん付けすぎると犬が驚いたり、液が飛び散ることがあります。また、乾いたコットンで強くこすると摩擦によって耳の皮膚を傷つける可能性があるため、必ずクリーナーで湿らせてから使用しましょう。
なお、獣医師から耳にクリーナーを直接入れて洗浄する方法を指導されている場合は、その方法に従ってください。
4-4. 耳の入り口や耳介の汚れを優しく拭き取る
クリーナーを含ませたコットンやガーゼで、耳の入り口や耳介(耳たぶの内側)に付着している耳垢を優しく拭き取ります。
このとき重要なのは、見える範囲だけを掃除することです。耳垢を完全に取り除こうとして耳の奥まで指や綿棒を入れる必要はありません。
耳掃除のポイントは以下のとおりです。
- 強くこすらない
- 円を描くように優しく拭く
- 耳垢が付いたらコットンのきれいな面に替える
- 無理に奥の汚れを取ろうとしない
耳垢が少し残っていても問題ありません。健康な耳であれば、自浄作用によって少しずつ外へ排出されます。
一度できれいにしようとせず、愛犬に負担をかけないことを優先しましょう。
4-5. 犬に頭を振らせて汚れを出す
耳掃除の途中で犬が自然に頭をブルブル振ることがありますが、これは正常な反応です。
頭を振ることで、イヤークリーナーによって浮き上がった耳垢や汚れが耳の入り口付近まで移動し、外へ排出されやすくなります。
犬が頭を振りたそうにしている場合は、無理に止めずに自由に振らせてあげましょう。この際、洗浄液や耳垢が飛び散ることがあるため、事前にタオルを敷いておくと後片付けが楽になります。
なお、頭を振った後も耳をしつこく掻いたり、何度も頭を振り続けたりする場合は、耳に痛みや炎症がある可能性があります。耳掃除を中断し、動物病院へ相談しましょう。
4-6. 汚れやクリーナーを拭き上げる
犬が頭を振った後は、耳の入り口付近に出てきた耳垢や余分なクリーナーを、乾いたコットンやガーゼで優しく拭き取ります。耳の中にクリーナーが大量に残ると湿気がこもり、細菌やマラセチア(酵母菌)が繁殖しやすい環境になることがあります。
特に耳が垂れている犬は通気性が悪いため、仕上げとして耳の入り口周辺をしっかり乾かすことが大切です。ここでも耳の奥まで拭こうとする必要はありません。見える範囲を乾いたコットンで軽く押さえる程度で十分です。
耳掃除全体を通して片耳あたり1〜2分程度で終わらせることを目安にすると、犬への負担も少なく済みます。
4-7. ご褒美をあげて耳掃除を終える
耳掃除が終わったら、最後にたくさん褒めてご褒美をあげましょう。
「耳掃除をするとおやつがもらえる」「飼い主に褒めてもらえる」という良い印象を持たせることで、次回以降も耳掃除を受け入れやすくなります。
特に耳掃除が苦手な犬は、最初から完璧にできなくても問題ありません。下記のように小さな成功を積み重ねることが大切です。
- 耳を触れたら成功
- 耳をめくれたら成功
- 片耳だけ掃除できたら成功
一方で、暴れたり強く嫌がるような場合は、その日の耳掃除は中断しましょう。無理に続けると「耳を触られるのは怖いこと」と学習してしまい、今後のケアがさらに難しくなる可能性があります。
耳掃除は、一度で完璧に終わらせることよりも、愛犬がストレスなく続けられる習慣にすることが何より重要です。普段から耳に触れるスキンシップを取り入れながら、少しずつ慣らしていきましょう。
5. 犬の耳掃除で気を付けたい5つの注意点
犬の耳掃除は耳の健康維持に役立つ一方で、やり方を間違えると耳を傷つけたり、かえってトラブルを引き起こしたりする可能性があります。特に耳の中は非常にデリケートなため、人間と同じ感覚でお手入れを行うのは避けるべきです。
また、耳の状態によっては耳掃除よりも動物病院での診察を優先したほうがよいケースもあります。愛犬の耳を安全にケアするために、耳掃除を行う際に知っておきたい注意点を確認しておきましょう。
5-1. 無理やり耳掃除をしない
耳掃除を嫌がる犬に対して、押さえつけたり無理やり耳を触ったりするのは避けましょう。
犬にとって耳は非常に敏感な部位です。一度でも「耳を触られるのは怖い」「痛いことをされる」と感じると、その後は耳に触れられるだけで逃げたり唸ったり、噛もうするようになることがあります。
特に、次のような様子が見られる場合は無理に耳掃除を続けないようにしましょう。
- 体を大きくよじって逃げようとする
- 耳を触ると唸る、歯を見せる
- 強く暴れる
- 強い恐怖で震えている
- 痛そうに鳴く
耳掃除は一度で終わらせようとせず、「今日は耳を触るだけ」「今日は耳をめくるだけ」と段階的に慣らしていくことが大切です。
どうしても耳掃除ができない場合は、トリミングサロンや動物病院でケアしてもらうことも選択肢の一つです。無理をして耳掃除嫌いにしてしまうよりも、専門家に任せたほうが愛犬への負担は少なく済みます。
5-2. 綿棒など人間用の耳掃除用品を使わない
犬の耳掃除では、人間用の綿棒や耳かきなどを使用しないようにしましょう。
人間は耳垢を綿棒で取ることがありますが、犬の耳の構造は人間とは異なります。犬の耳道はL字型になっているため、綿棒を入れると耳垢をさらに奥へ押し込んでしまう可能性があります。
また、犬が急に頭を動かすと綿棒が耳道に当たって傷をつけたり、炎症を悪化させたりする危険もあります。耳掃除には、次のような犬専用の道具を使用しましょう。
- 犬用イヤークリーナー(洗浄液)
- コットン
- ガーゼ
- 犬用イヤーシート
なお、人間用のイヤーローションやアルコール、オキシドールなども犬の耳には刺激が強いため使用してはいけません。
「人間にも使えるから犬にも大丈夫」と考えず、愛犬の耳には犬専用の製品を選ぶことが、安全な耳掃除につながります。
5-3. 耳の奥まで無理に掃除しない
耳掃除で最も大切なのは、見える範囲だけを掃除することです。
耳垢が気になると、つい奥まできれいにしたくなるかもしれません。しかし、自宅で耳の奥まで掃除しようとするとかえって耳を傷つけたり、耳垢を押し込んでしまう原因になります。
健康な犬の耳には自浄作用があり、耳垢は自然に少しずつ耳の入り口へ移動してきます。そのため、自宅で掃除するのは耳介(耳たぶ)や耳の入り口付近だけで十分です。
特に次のような行為は避けましょう。
- 指を耳の奥まで入れる
- 綿棒で耳の奥をこする
- 無理に固まった耳垢を剥がす
- ピンセットで耳垢を引っ張る
もし耳の奥に大量の耳垢が見える場合や、自宅では取れないほど汚れがたまっている場合は、無理に取り除こうとせず、動物病院で処置してもらうことをおすすめします。
5-4. 耳掃除のやりすぎに注意する
耳を清潔に保ちたいからといって、頻繁に耳掃除を行うのは逆効果になることがあります。
耳の中には、皮膚を乾燥や細菌から守るために必要な皮脂や常在菌が存在しています。耳掃除をしすぎるとこれらまで取り除いてしまい、耳のバリア機能が低下する恐れがあります。
その結果、下記のようなトラブルにつながることがあります。
- 耳の中が乾燥する
- 皮膚が傷つきやすくなる
- 細菌やマラセチアが繁殖しやすくなる
- 外耳炎を繰り返しやすくなる
「耳垢が少しある=すぐ掃除が必要」というわけではありません。耳垢は耳を守る役割も担っているため、少量であれば無理に取り除く必要はないのです。
基本的には月1〜2回程度を目安にしつつ、愛犬の耳の状態を観察しながら必要なときだけケアすることを心掛けましょう。外耳炎の治療中などで獣医師から耳掃除の頻度を指示されている場合は、その指示を優先してください。
5-5. 異常がある際は動物病院を受診する
耳掃除で改善できるのは、あくまでも健康な耳に付着した軽い汚れや耳垢です。耳に炎症や感染症などの病気が起きている場合は、自宅で耳掃除を続けても改善しないどころか、症状を悪化させてしまう可能性があります。
特に、次のような症状が見られる場合は耳掃除を中止し、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
- 強い悪臭がする
- 黒色や黄色の耳垢が大量に出る
- 耳の中が赤く腫れている
- 膿や出血が見られる
- 頭を何度も振る
- 耳を頻繁に掻いている
- 耳を触ると痛がる
- 首を傾けたり、ふらついたりする
これらの症状は、外耳炎や耳ダニ、細菌・真菌感染、アレルギーなどが原因となっている可能性があります。特に首を傾ける、まっすぐ歩けないといった症状は中耳炎や内耳炎へ進行していることも考えられるため、早急な診察が必要です。
「汚れているから掃除をしよう」と自己判断するのではなく、いつもと違うと感じたらまず病気を疑うことが大切です。早期に適切な治療を受けることで愛犬の負担を最小限に抑え、重症化を防ぐことにつながります。
6.こんな場合は要チェック!犬の耳トラブルのサイン
犬は耳に違和感や痛みがあっても、言葉で不調を伝えることができません。そのため、耳のトラブルに気付くには、日頃から愛犬の行動や耳の状態をよく観察することが大切です。
耳の病気は早期に発見・対処することで重症化を防げるケースが多くあります。一方で、異変を見逃してしまうと、外耳炎などの症状が悪化し、治療が長引く可能性もあります。ここでは、犬の耳トラブルを疑うべき代表的なサインについて解説します。
6-1. 耳を頻繁にかいたり気にしたりしている
犬が耳を何度も掻いたり前足で耳をこすったり、床や家具に耳を擦り付けている場合は、耳に違和感やかゆみ、痛みを感じている可能性があります。
一時的に耳を掻く程度であれば心配ないこともありますが、何度も繰り返す場合は注意が必要です。かき続けることで耳の皮膚が傷つき、炎症や細菌感染を悪化させてしまうこともあります。
耳を頻繁に気にする原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 外耳炎
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の寄生
- アレルギー
- 耳の中に水や異物が入っている
- 虫刺されや皮膚炎
また、耳だけでなく足先を舐めたり、体全体をかゆがったりしている場合は、アレルギーが関係しているケースもあります。
耳を掻く様子が数日続く、耳掃除をしても改善しない、耳を触ると嫌がるといった場合は、自己判断で様子を見るのではなく、動物病院を受診しましょう。
6-2. 頭を何度も振っている
犬が「ブルブル」と頭を振る行動は、水を切るためや気分転換として見られることもあるため、1〜2回程度であれば心配はいりません。
しかし、何度も繰り返し頭を振る場合は、耳の中に強い違和感があるサインかもしれません。例えば、次のような原因が考えられます。
- 外耳炎によるかゆみや痛み
- 耳ダニの寄生
- 耳の中に草の種や小さな異物が入った
- シャンプーや水遊びで耳に水が残っている
- 耳垢が大量にたまっている
特に、散歩から帰った直後やシャンプー後に頭を振り続ける場合は、耳の中に異物や水分が残っている可能性があります。
また、頭を振るだけでなく、首を傾ける、ふらつく、まっすぐ歩けないなどの症状が見られる場合は、中耳炎や内耳炎などより重い病気が隠れていることもあります。こうした症状がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
6-3. 耳垢が急に増えた・色が変わった
健康な犬でも少量の耳垢は見られますが、急に耳垢が増えたり、色や質感が変わったりした場合は注意が必要です。
耳垢は耳の健康状態を知る重要なサインの一つであり、色や量によって疑われる原因が異なることがあります。
▼注意すべき耳垢の状態▼
耳垢の状態 | 考えられる原因 |
黄色や黄緑色でベタベタしている | 細菌感染や外耳炎 |
黒くポロポロしている | 耳ダニや慢性的な外耳炎 |
耳垢が急激に増えた | 炎症、感染症、アレルギーなど |
ただし、耳垢の色だけで病気を判断することはできません。耳垢の増加に加えて、臭いや赤み、かゆみなどの症状も見られる場合は、病気の可能性が高くなります。
耳垢が気になるからといって何度も耳掃除をするのではなく、まずは原因を確認することが大切です。
6-4. 耳から嫌なにおいがする
健康な犬の耳には、ほとんど強いにおいはありません。そのため、耳から酸っぱい臭いや発酵したような臭い、腐ったような強い悪臭がする場合は、耳のトラブルを疑いましょう。
特に細菌やマラセチア(酵母菌)が増殖すると、独特の強い臭いが発生することがあります。
耳の臭いとあわせて、次のような症状が見られる場合は外耳炎の可能性があります。
- ベタベタした耳垢が付着している
- 耳の中が赤くなっている
- 頭を頻繁に振る
- 耳を掻く回数が増えた
- 耳を触ると嫌がる
臭いをごまかすために耳を頻繁に洗浄するのは逆効果になることがあります。原因となる細菌や真菌、アレルギーなどを治療しなければ改善しないため、異臭を感じたら早めに動物病院で診察を受けましょう。
6-5. 耳が赤く腫れている
耳の中や耳の入り口が赤くなっていたり、腫れて熱を持っていたりする場合は、炎症が起きている可能性があります。
健康な耳の内側は薄いピンク色をしていますが、赤みが強くなっている場合は外耳炎やアレルギー、耳ダニ、異物による刺激など、さまざまな原因が考えられます。特に次のような症状を伴う場合は注意が必要です。
- 耳を触ると痛がる
- 耳の中が熱っぽい
- 出血や膿がある
- 耳介(耳たぶ)が腫れている
- 耳を掻き続けている
また、耳を強く掻き続けた結果、耳介の内側に血液がたまる「耳血腫(じけっしゅ)」を起こすこともあります。耳が風船のように腫れている場合は、早急な治療が必要です。
赤みや腫れは自然に治ることもありますが、放置すると慢性化して耳道が狭くなり、外耳炎を繰り返しやすくなることもあります。
耳の色や形にいつもと違う変化が見られたら、自宅で耳掃除を続けるのではなくできるだけ早く動物病院を受診しましょう。
7.犬の耳掃除に関するよくある質問
7-1. 犬が耳掃除を嫌がる場合はどうすればよい?
犬が耳掃除を嫌がる場合は無理に続けるのではなく、耳を触られることに慣れてもらうことから始めるのが大切です。一度でも押さえつけられたり、痛い思いをしたりすると、「耳を触られる=嫌なこと」と学習してしまい、その後の耳掃除がますます難しくなることがあります。
耳掃除が苦手な犬には、次のようなステップで少しずつ慣らしていくのがおすすめです。
- 頭や首を優しく撫でる
- 耳の付け根を数秒触る
- 耳を軽くめくる
- コットンを耳に軽く当てる
- 耳の入り口を短時間だけ拭く
それぞれのステップができたら、おやつをあげたり優しく褒めたりして「耳を触られると良いことがある」と覚えてもらいましょう。
また、一度に完璧な耳掃除をしようとしないことも重要です。例えば、「今日は片耳だけ」「今日は耳をめくるだけ」でも十分です。短時間で終わらせることで、犬のストレスを軽減できます。
一方で、耳を触るだけで激しく嫌がる、痛がる、怒るような場合は、耳の中に炎症や外耳炎などの病気が隠れている可能性があります。そのような場合は無理に耳掃除をせず、動物病院で診察を受けましょう。
どうしても自宅で耳掃除が難しい場合は、トリミングサロンや動物病院に依頼するのも一つの方法です。愛犬に無理をさせず、安全に耳をケアすることを優先しましょう。
7-2. 犬の耳垢はどのくらいなら正常?
犬の耳垢は、少量で薄い茶色〜黄褐色のものが耳の入り口付近に付着している程度であれば、基本的には正常と考えられます。
耳垢は、皮脂や古い皮膚、ホコリなどを外へ排出する役割があり、健康な犬でも多少は見られるものです。そのため、「耳垢がある=病気」というわけではありません。
正常な耳垢と注意が必要な耳垢の違いをまとめると、以下のようになります。
耳垢の状態 | 判断の目安 |
少量で薄い茶色、乾いている | 正常な範囲であることが多い |
少し拭けば取れる程度 | 日常的なケアや様子見で問題ないケースが多い |
黄色や黄緑色でベタベタしている | 外耳炎や細菌感染の可能性 |
黒くポロポロした耳垢が大量にある | 耳ダニや慢性の外耳炎の可能性 |
急に耳垢が増えた | 炎症やアレルギーなどの可能性 |
ただし、耳垢の量には個体差があります。耳垢が出やすい犬種やアレルギー体質の犬では、健康でも比較的耳垢が多く見られることがあります。
大切なのは、普段の愛犬の耳と比べて変化がないかを観察することです。
- 以前より耳垢が急に増えた
- 色が黒や黄色に変わった
- ベタベタした耳垢が付くようになった
- 強い臭いがする
- 耳を掻いたり頭を振ったりするようになった
上記のような変化が見られる場合は、耳垢だけを取り除こうとするのではなく、原因を調べるために動物病院を受診することをおすすめします。
耳垢は耳の健康状態を知る重要なサインの一つです。日頃から週に1回程度は耳の入り口を確認し、いつもと違う変化がないかをチェックする習慣をつけることで、外耳炎などの耳トラブルを早期に発見しやすくなります。
4. まとめ
犬の耳掃除は、すべての犬に定期的なケアが必要というわけではありません。健康な耳には本来、自浄作用が備わっているため、耳垢が少なく異常がない犬であれば頻繁な耳掃除は不要なケースもあります。
一方で、垂れ耳の犬や耳の中に毛が多い犬、外耳炎になりやすい犬などは耳垢がたまりやすく、適切な頻度で耳掃除を行うことが耳の健康維持につながります。ただし、耳掃除をやりすぎたり、綿棒で耳の奥まで掃除すると、かえって耳を傷つけたり炎症を引き起こしたりする可能性があるため注意が必要です。
耳掃除で最も大切なのは、耳をきれいにすることではなく、耳の異変に早く気付くことです。普段から耳の色や臭い、耳垢の量、愛犬の様子を観察する習慣をつけることで、外耳炎などの耳トラブルを早期に発見しやすくなります。
もし、耳を頻繁に掻く、頭を何度も振る、耳から強い臭いがする、耳垢が急に増えたなどの症状が見られる場合は、自宅で何度も耳掃除をするのではなく早めに動物病院を受診しましょう。
愛犬の耳の健康を守るには、必要なときに正しい方法で耳掃除を行うことと、日頃から耳の状態を観察することが何より大切です。毎日のスキンシップの中で耳をチェックする習慣を取り入れ、愛犬が快適に過ごせるようケアしてあげましょう。






